
AIエージェント開発を行う前に考えること。ワークフローとエージェントをどう組み合わせるか
2026/06/05
こんにちは、おぐりんです。
最近、「AIエージェントを作りたい」「自社でもエージェントを活用したい」という相談が増えてきました。
この流れ自体は、とても自然だと思っています。
僕自身も、日々の仕事の中でエージェントを活用するシーンはかなり増えました。体感、9割くらいはエージェントを活用しています。
ただ、ここで最初に考えるべきことがあります。
AIが業務に参加することを前提に、業務そのものをどう設計し直すかです。
AIエージェントは、ワークフローの上位互換ではない
エージェントという言葉が広がると、どうしても「ワークフローは古くて、エージェントの方が新しい」という見方になりがちです。
でも、実務ではそう単純ではありません。
毎回同じアウトプットがほしい業務は、ワークフロー化した方が速く、安く、安定します。一方で、アイデア出し、調査、仮説づくり、論点整理のように、自由度を持たせた方が成果が出る業務もあります。こうした仕事では、細かく手順を固定するより、目的や観点を渡して、AIに探索させる方がうまくいくことがあります。
つまり、重要なのは「エージェントか、ワークフローか」を選ぶことではありません。
ワークフローとエージェントをどう組み合わせるかです。
業務の棚卸しは、人間前提では足りない
ここで必要になるのが、業務の棚卸しです。
ただし、よくある業務改善のように「今、人がどうやっているか」をそのまま分解するだけでは足りません。
AIがやることを前提にした業務棚卸しが必要です。
人間がやる前提なら、暗黙の了解、空気感、過去の経緯、社内の価値観をかなり雑に扱っても、なんとなく仕事は進みます。
でも、AIに任せる場合はそうはいきません。
何を見て判断するのか。どこまで自律的に動いてよいのか。どの情報を使ってよいのか。どこで人間が確認するのか。どんな判断は会社として避けたいのか。
こうした前提を整理しないままAIに任せると、AIはそれっぽいアウトプットは出せても、その会社らしい判断にはなりません。
以前、コンテキストエンジニアリングの記事でも書きましたが、AIに渡すべきものは資料やマニュアルだけではありません。会社の判断基準、価値観、暗黙知、物語性まで含めた「会社の文脈」が重要になります。
エージェント化に向いている業務
エージェント化に向いているのは、自由度を与えた方が価値が出る業務です。
たとえば、次のようなものです。
・新規施策のアイデア出し
・市場や競合の調査
・顧客課題の仮説づくり
・企画の壁打ち
・複数の資料を見た上での論点整理
・次に確認すべきことの洗い出し
こうした業務では、最初から「この順番で、この形式で、この答えを出して」と決めすぎると、AIの良さが消えてしまいます。
むしろ、目的、制約、見てほしい観点、会社として大事にしたい判断基準を渡し、その中でAIに考えさせる方が向いています。
ここにエージェントの価値があります。
ワークフロー化に向いている業務
一方で、ワークフロー化した方がいい業務もたくさんあります。
たとえば、次のようなものです。
・問い合わせ内容の分類
・議事録の整形
・定型レポートの生成
・見積作成の下準備
・CRMへの記録
・承認依頼の作成
・社内共有用のフォーマット化
こうした業務では、毎回AIに自由に考えさせる必要はありません。
入力、処理、出力、確認ポイントを決めておいた方が、品質もコストも安定します。
エージェントは、考えたり、調べたり、試したり、やり直したりする分、時間的コストも実行コストも増えます。
決まった成果物を安定して出したいだけなら、エージェントにするより、ワークフローとして設計した方が効果的です。
実務では、だいたい組み合わせになる
実際の現場では、エージェントとワークフローのどちらか一方だけで完結することは少ないです。僕自身の使い方でも、むしろ組み合わせることの方が多いです。
たとえば、まずワークフローで必要な情報を集める。次に、そのタイミングでエージェントを呼び出して、論点整理やアイデア出しをしてもらう。その結果を人間が見てフィードバックする。最後に、またワークフローに戻して、文書化、共有、記録、次アクション化を行う。
このような形です。

ここで大事なのは、AIを一つの魔法の箱として扱わないことです。
固定できるところは固定する。
自由度が必要なところはエージェントに任せる。
責任が発生するところは人間が見る。
この設計があるから、AIエージェントは仕事の中で使えるものになります。
AI前提の業務棚卸しで見るべきこと
AIエージェント開発を行う前に、最低限見ておきたいのは次のような点です。
・その業務は、何を入力として始まるのか
・最終的に、どんなアウトプットが必要なのか
・途中で、どんな判断が発生しているのか
・その判断には、どんな会社の方針や価値観が関係しているのか
・AIに任せてよい範囲はどこまでか
・人間が確認すべきポイントはどこか
・失敗した時に、どんなリスクがあるのか
・改善できたと言える基準は何か
この整理をすると、ようやく見えてきます。
ワークフロー化すべきなのか。
エージェント化すべきなのか。
人間承認を挟むべきなのか。
そもそも業務の設計を変えた方がいいのか。
AIエージェント開発とは、単にAIに作業を渡すことではありません。
AIが関わる前提で、業務、人間、判断、文脈の関係を設計し直すことです。
外部の支援が必要になる理由
ここまで整理すると、「AIエージェントを作る」という話は、単なる開発の話ではないことが分かります。
もちろん、技術は必要です。
ツール連携、データ連携、権限管理、ログ、評価、セキュリティも重要です。
ただ、その前に「どの業務にAIを入れるべきか」「どこを固定し、どこに自由度を持たせるか」「会社として何を任せてよいのか」を決める必要があります。
ここは、社内だけで考えるのが難しいことも多いです。
なぜなら、自社の業務は近すぎるからです。普段当たり前にやっている判断ほど、言語化されていません。自社のポリシーや物語性ほど、資料には残っていないことがあります。
だから、外部の支援を使う価値は、単にAIツールを入れてもらうことではありません。自社の業務の中で、AIが本当に活きる場所を一緒に見つけることです。
Aidiaでは、AI研修やAI顧問、AI導入支援の中で、こうした業務の棚卸しやAI活用設計の相談も行っています。エージェントが本当に活きる業務構造を一緒に見つける。
これが、これからのAI活用ではかなり重要になると思っています。
まとめると
AIエージェントの活用事例は、これからもっと増えていくと思います。
それは、業務がきれいにワークフロー化されていない現場ほど、AIが介在できる余地が大きいからです。人間の仕事には、曖昧さ、判断、探索、創造性がたくさん含まれています。
だからこそ、エージェントは重要です。
ただし、すべてをエージェントに任せればいいわけではありません。
AIエージェント開発を行う前に必要なのは、AI前提で業務を棚卸しすることです。
固定すべきところはワークフローにする。自由度が必要なところはエージェントに任せる。会社の文脈が必要なところは、ポリシーや判断基準を整える。責任が発生するところは、人間が確認する。
この組み合わせを設計できて初めて、AIエージェントは「便利なチャットAI」ではなく、会社の仕事を進める仕組みになります。
AIエージェントを作る前に、まず自社の業務をAI前提で見直してみる。
その一歩から始めるのが、実務では一番堅実だと思います。














