
AI研修は人材開発支援助成金の対象になる?「最大75%助成」を正しく理解する
2026/07/19
こんにちは、おぐりんです。
最近、法人向けの研修サービスを見ていると、「人材開発支援助成金で最大75%助成」という言葉をよく見かけます。SNS広告でも目にする機会が増えました。
かなり魅力的な言葉です。ただ、ここで最初に押さえておきたいことがあります。
「最大75%助成」は、「研修価格が誰でも75%OFFになる」という意味ではありません。
人材開発支援助成金は、企業が従業員の職業能力開発を行う際に、要件を満たした訓練の経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。AI研修も申請候補になり得ますが、「AIを学ぶ研修」というだけで自動的に対象になるわけではありません。
僕自身、Aidiaで法人向けの生成AI研修を設計する中で、この制度をかなり詳しく調べました。調べれば調べるほど感じたのは、助成率の大きさだけを伝えるより、どんな研修なら対象候補になるのか、どこに注意が必要なのかを正確に伝える方が重要だということです。
今回は、令和8年度の「事業展開等リスキリング支援コース」を前提に、AI研修で人材開発支援助成金の活用を検討するときのポイントを整理します。制度は年度途中でも改定される可能性があるため、実際に検討するときは厚生労働省の最新案内を確認してください。
最大75%助成は「75%OFF」ではない
まず、最も誤解されやすい部分です。
事業展開等リスキリング支援コースでは、経費助成率は中小企業で75%、中小企業以外で60%とされています。ただし、この割合が掛かるのは研修価格全体ではなく、制度上の対象経費として認められた範囲です。さらに、1人当たりの上限や1事業所当たりの上限があり、最終的な支給額は支給申請後の審査で決まります。
そのため、次のような表現は正確ではありません。
「100万円の研修が必ず25万円になる」
「この研修は75%OFFで受けられる」
「計画届が受理されたので、助成金は確定した」
正しくは、「所定の要件を満たした場合、対象経費について最大75%の助成を受けられる可能性がある」です。

この違いは小さく見えますが、企業が予算を判断する上ではかなり重要です。助成金を前提に研修を決める場合でも、最初から支給を確定収入のように扱わず、対象外経費や不支給の可能性を含めて資金計画を立てる必要があります。
AI研修なら、すべて対象になるわけではない
では、どのようなAI研修が申請候補になるのでしょうか。
大きな入口は、研修の目的が次のいずれかに該当することです。
新規事業や事業転換などの「事業展開」に必要な知識・技能を学ぶ
企業のDX・GXを進めるために必要な専門知識・技能を学ぶ
人材育成計画に基づき、現在とは異なる職務への配置に必要な知識・技能を学ぶ
AI研修では、DXとの関係が検討しやすいと思います。ただし、「ChatGPTの使い方を学びます」だけでは十分とは限りません。
たとえば、営業部門で提案書作成や顧客分析のプロセスを変える。バックオフィスで文書作成や情報整理の流れを再設計する。経営企画でリサーチや事業検討に生成AIを組み込む。このように、受講者の職務や会社のDX方針と、研修内容が具体的につながっていることが重要です。
反対に、一般的なAIの紹介、意識改革だけのセミナー、交流会、通常業務の代行、コンサルティングだけの時間は、訓練として認められにくい可能性があります。
ここで大事なのは、研修のタイトルではなく中身です。
もう一つの大きな条件が「実訓練時間10時間以上」
AI研修を助成金の申請候補として設計する場合、実訓練時間は原則10時間以上必要です。
しかも、単にスケジュール表の合計が10時間あればよいわけではありません。休憩、移動、対象外となる内容などは実訓練時間に算入されないため、余裕を持った設計が必要です。
たとえば、2時間の研修を3回実施する6時間プログラムは、内容が良くても原則10時間以上という条件を満たしません。Aidiaでも、通常の短時間研修と、助成金活用を検討する研修は分けて考えています。後者については、3時間×4回の計12時間を一つの設計候補としています。
ただし、12時間と書けば自動的に対象になるわけではありません。休憩を除いた実訓練時間、各回の内容、講師、受講記録、成果物、職務との関連まで、一貫して説明できる状態にしておく必要があります。
助成金に合わせて時間だけを引き延ばすのではなく、10時間以上かけて学ぶ意味のある研修にする。ここは研修会社側の責任だと思っています。
研修開始の1か月前では、実務上は遅い
計画届は、原則として訓練開始日の6か月前から1か月前までに提出します。
ただし、1か月前は法定上の最終期限です。そこから逆算して初めて相談を始めると、受講対象者、カリキュラム、日時、講師、実施方式、契約、費用負担、必要書類を整理する時間が足りなくなる可能性があります。
実務上は、研修開始の45〜60日前までに実施可否を判断するくらいの余裕を持った方が安全です。これは法律上の期限ではなく、書類準備や差し戻しへの対応時間を確保するための運用上の目安です。
また、計画届が受理されても、支給が決まったわけではありません。研修実施後に支給申請を行い、労働局の審査を経て支給・不支給と金額が決まります。
「申し込めば終わり」ではなく、計画、実施、記録、支給申請までが一つの流れです。
研修費と、コンサル・AIツール費は分けて考える
生成AIの導入支援では、研修以外の支援が一緒になることがあります。
たとえば、AIツールのアカウント費用、業務フローの設計、個別コンサルティング、システム導入、通常業務の代行などです。これらは、研修費と同じ扱いになるとは限りません。
そのため、助成金活用を検討する案件では、研修、コンサルティング、AIツール費、導入支援を、契約・見積・時間・証憑の段階から分けておくことが重要です。
これは申請のためだけではありません。何に対して費用を払っているのか、研修後に何が残るのかを企業側が正しく判断するためにも必要です。
まず確認したい4つのこと
自社のAI研修が申請候補になりそうか考えるときは、まず次の4点を確認すると整理しやすくなります。
誰が受講するのか。その人は申請事業主に雇用される対象労働者か
何のための研修か。事業展開、DX・GX、異職務への配置計画のどれに関係するか
何時間、どのように実施するのか。OFF-JTとして10時間以上を確保できるか
いつ始めるのか。計画届と必要書類の準備期間を確保できるか
この4点が曖昧なまま、先に「最大75%」だけを営業トークにしてしまうのは危険です。
一方で、ここが整理できれば、助成金のためだけではなく、研修そのものの目的も明確になります。誰に、何を、なぜ学んでもらい、業務をどう変えたいのか。これは本来、AI研修を設計する上で最初に考えるべきことです。
助成金を、研修の質を下げる理由にしない
人材開発支援助成金は、企業がAI研修に取り組むきっかけとして、とても有効な制度だと思います。費用面のハードルが下がれば、短い体験会だけでなく、複数回の実践や社内定着まで含めた研修を検討しやすくなります。
ただし、助成金を使うこと自体が目的になると、時間や形式を満たすだけの研修になってしまいます。
大切なのは、助成金がなくても実施する意味のある研修を設計し、その研修が制度要件にも合うかを確認する順番です。
Aidiaでは、法人向けのAI研修について、会社の業務、受講者、研修目的、実施時間を確認しながら内容を設計しています。人材開発支援助成金の活用を前提に検討したい場合も、まずは自社の研修が申請候補になりそうか、研修設計の観点から一緒に整理できます。
ただし、個別案件の受給可否を確約したり、有償で申請書の作成・提出を代行したりするものではありません。最終的な制度確認は管轄労働局へ、申請代行が必要な場合は社会保険労務士へ相談する必要があります。
「最大75%」という言葉だけで決めるのではなく、自社に必要な研修と、制度上必要な条件を一つずつ整理する。
そこから始めるのが、一番確実だと思います。














